研究室紹介
並河 英紀(なびか ひでき)
教授
理学部長
TEL&FAX: +81-(0)23-628-4589
e-mail: nabika@sci.kj.yamagata-u.ac.jp
Google Scholar Scitation
【Education / 学歴, 学位】
1999: B. Eng, Kobe Univ / 学士(工学)神戸大学
2001: M. Eng, Kobe Univ / 修士(工学)神戸大学
2004: D. Sci., Kobe Univ / 博士(理学)神戸大学
【Carrier / 職歴】
2003.09-2011.03: Assistant Professor, Hokkaido Univ / 助教, 北海道大学
2011.04-2014.03: Associate Professor, Yamagata Univ / 准教授, 山形大学
2014.04-2015.03: Professor, Yamagata Univ / 教授, 山形大学, 理学部
2015.04-現在: Professor, Yamagata Univ / 教授, 山形大学, 学術研究院(理学部主担当)
2017.04-2019.03: 山形大学副学長特別補佐
2019.04-現在: 山形大学教育研究評議会評議員
2019.04-2022.03: 山形大学理学部副学部長
2022.04-現在: 山形大学理学部長
【Others / その他】
2015.08-2017.07: 文部科学省研究振興局学術調査官
2016: 甲南大学非常勤講師
2018: 放送大学非常勤講師
2018: 大阪市立大学非常勤講師
2020: 甲南大学非常勤講師
2021: 広島大学客員教授
2021: Guest Editor of Materials (ISSN 1996-1944), Special Issue "Self-Organization and Spontaneous Order for Functional Materials"
2023: Guest Editor of Frontiers In Physics (), Special Issue "Static and Dynamic Pattern Formation from Nano to Macro scales"
2008.08-現在: 日本化学会コロイド及び界面化学部会 編集委員
2009.01-2013.03: 日本分光学会ナノ分光部会 幹事
2009.04-2011.03: 電気化学会北海道支部 幹事
2011.11-2022.03: 日本分光学会 代議員
2013.03-2015.03: 日本化学会 代表正会員
2015.04-2022.02: 日本化学会コロイド及び界面化学部会 若手WG委員
2019.03-2021.02: 日本化学会コロイド及び界面化学部会 副編集委員長
2021.03-2023.02: 日本化学会コロイド及び界面化学部会 編集委員長
【主な受賞】
2008: 第18回日本表面科学会奨励賞
2011: 第10回コロイド及び界面化学部会化学奨励賞
2013: 第13回インテリジェント・コスモス奨励賞
2021: 令和3年度山形大学優秀教育者賞
Overview
生物・無生物を問わず、分子がたくさん集まることでカタチが生まれ、カタチが生まれることで機能が生まれます。ところが、分子に意思はありません。では、どの様にして分子たちは意味のあるカタチや機能を生み出しているのでしょうか。それを探るのが、自己組織化という学問です。
並河研究室では、自己組織化をキーワードに、生命システムの機能や自然界の時空間構造の形成機構の解明を目指しています。自然界の様々な事象に目を向け、その化学的理解に基づいた基礎学問への還元ならびに最先端技術・超機能材料への展開を目指した研究を行っています。テーマによっては物理・生命・数理・地球科学・農学・医学・薬学・社会科学などの知識も必要になりますが、基本的に予備知識は不要です。研究室に入ってから必要な知識を勉強します。これより下には幾つかのテーマを紹介しますが、詳細を知りたい方は並河までお問い合わせください。
山形大学のSDGsポータルサイトにて掲載されている研究紹介もご覧ください。
リーゼガング現象
自然界は、見た目にも美しい空間的な周期性(例えば、シマウマの縞模様や、太陽系惑星軌道の同心円模様)にあふれています。その中には、一見すると全く関係のない現象であるにもかかわらず、全く同じ原理で作り出されている周期性・模様もあります。その「原理」を探るのが「自己組織化」という学問です。当研究室では、100年以上の研究の歴史がありながらも、いまだ多くの謎に包まれているリーゼガング現象(Liesegang現象)に着目し、その反応機構解明を目指した研究を実験とシミュレーションの双方から行っています。リーゼガング現象の理解は、化学のみならず、生物学、物理学、数学、宇宙物理学、社会科学など多岐にわたる分野の類似構造の共通原理である可能性があるため、自然界の自己組織化を探る研究として大変興味が持たれています。並河研究室では、この100年来の謎であるリーゼガング現象の形成機構解明へ向け、実験とシミュレーションの双方から研究をしています。
タンパク質の自己組織化
生体内では様々なたんぱく質が生命機能の一部を担っています。その中にはタンパク質どうしが規則的に並んだ構造を自己組織的に作ることがあります。その一つが、アルツハイマー病の原因となると言われているアミロイドβタンパク質です。なぜアミロイドβタンパク質が自己組織化するのか、そして、その自己組織化に影響を及ぼしている因子が何かを突き止めることは、アルツハイマー病の原因・予防・治療に役立つため世界中で研究が進められています。並河研究室でも、非平衡開放系での自己組織化、細胞膜との相互作用、液液相分離との相互作用など、様々な角度からアミロイドβタンパク質の自己組織化の研究をしています。
細胞膜機能
細胞膜は細胞の内と外を隔てる防御壁としての機能を担っています。ただし、細胞の生命活動に必須なイオン・分子の外部からの取り込み、また、細胞内の代謝等により生成した不要うな物質を外へ輩出する必要もあります。その為、細胞膜は壁としての機能だけではなく、特定のイオン・分子の出入りを分子選択的に可能とする門番としての機能も併せ持っています。その高度な機能を分子科学の観点から解明し、細胞膜機能の本質を追究する研究をしています。
人工甘味料・アスパルテームの危険性と機能性
人工甘味料アスパルテームは年間需要量480万トン(2016年、日本)、市場規模3.9億ドル(2023年、世界)と広く食用されている一方で、その代謝産物が細胞生存率低下や細胞形態変化を誘導することもあり、2023年には国際がん研究機関により発がんリスク2Bに指定されました。WHOと国連食糧農業機関の合同食品添加物専門家会議はアスパルテームが有害だと確信できる証拠はないとはしているものの、「有害だと確信できる証拠はない」ことと「無害である」ことは科学的には全く異なります。実際に、アスパルテームが生細胞に対する細胞膜毒性を示す研究も報告されております。その様な中で、並河研究室ではアスパルテームの細胞膜への作用に着目した研究を進めています。どの様な組成の細胞膜に対して、アスパルテームがどのような作用を示すのか。これを、蛍光顕微鏡(左の写真)や分光法、水晶振動子マイクロバランスや表面圧測定など、多面的な角度から検証をすr研究を進めています。本研究を進めることで、アスパルテームの危険性だけではなく、食としての機能性の発掘・創発も期待できます。
ボロノイ分割
皆さんは小さいころにトンボを捕まえたことはありますか?トンボの翅をよく見ると、不思議な模様が見えてくると思います。この模様は、ボロノイ分割と呼ばれる現象で説明できるとされています。ボロノイ分割とは、トンボの翅の翅脈模様だけではなく、植物の葉の葉脈模様、乾燥した田んぼに見られるひび割れ、ハチの巣の断面、泡の断面など様々な場面で現れる模様です。さらに、ボロノイ分割は自然の中で自発的に形成するだけではなく、都市計画や携帯電話の基地局配置、天気予報の地域分割など、現代社会を支える基本デザインとしても活用されています。この様な自然界にも産業界にも見られるボロノイ分割の形成機構の多様性について、並河研究室では化学反応やシミュレーションを用いた研究をしています。左の写真は、シャーレの中で化学反応をさせて現れたボロノイ分割です。条件を変えると、この模様の現れ方が変わります。その機構を理解することが、ボロノイ分割の理解へとつながります。